プロダクトマネジメント

チームで共有しやすいサービスコンセプトの表現方法

チームメンバーが共通認識を持ち、よりスムーズに連携しやすくなるコンセプトの表現とその作り方を簡単に紹介します。
読了目安:9分
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Kota Kameyama
2019-1-10

サービスのコンセプト(方向性)は、新規サービスの開発や既存サービスのリニューアルを行うときに決められることが多いですが、プロジェクトチームに多様な価値観を持つ人が集まっていると、次のような問題に直面してしまうことがあります。

  • 問題 1:サービスのコンセプト(方向性)に対する認識がチームメンバーごとに少しずつズレている
  • 問題 2:認識のズレによって円滑なコミュニケーションや連携が取れない

コンセプトはよく一言二言の洗練された言葉で表現されますが、同じ言葉を聞いても人によって価値観や解釈、イメージが異なっていることが原因の1つとして挙げられます。しかし、コンセプトの表現に次の工夫を加えることによって、チームメンバーが素早く共通の認識を持ちやすくなります。

  • コンセプトの表現方法 1:写真
  • コンセプトの表現方法 2:ストーリー形式の文章
  • コンセプトの表現方法 3:ストーリーボード
  • コンセプトの表現方法 4:動画(参考)

そこで、本記事では各コンセプトの表現とその作り方を簡単に紹介していきます。

コンセプトの表現方法 1:写真

まず初めに、写真でコンセプトを表現する例を紹介します。 たとえば、あなたは会社で新しい料理教室を立ち上げることになり、 「料理を作る楽しさとみんなで食べる楽しさを提供する料理教室」 というコンセプトを定めたとします。それをチームメンバーに共有すると、下記のように反応が分かれるかもしれません。

  • Aさん「どういうこと?良く分からない」
  • Bさん「(言葉だけ見れば)なんとなく良さそうだな」
  • Cさん「その良さ、凄く分かる!」

このコンセプトの意味するところは「単に料理の技術を教えるだけでなく、自分で作った料理で家族や友人と素敵な食事の時間を過ごすという価値を提供する」ということなのですが、その説明をする時に次のような写真もあるとチームメンバーにその良さを実感してもらいやすくなります。

いかにも楽しそうに料理をしている写真や笑顔で食卓を囲んでいる写真を使って、「こんな素敵な時間を料理教室を通して実現できたら、とても価値があるのではないか」と説明すれば、コンセプトの意義やサービスの価値をチームメンバーも理解しやすくなります。理解しやすいということは、同時に共通認識を持ちやすいということでもあります。

写真の探し方

コンセプトに添える写真を探すときは下記のポイントを参考にすると良いと思います。丁度良い写真が見つからない場合は、切り貼りするなどして自分で写真を作るのもありです。

  • サービスの価値を享受したユーザーの状態を示す写真
  • 表情や雰囲気にサービスの価値が表れている写真

コンセプトの表現方法 2:ストーリー形式の文章

次に、コミュニケーションツールの「Slack」を例にストーリー形式の文章で表現されたコンセプトを紹介します。ここで言うストーリー形式の文章とは、下記の要素から構成される文章のことです。



ストーリーの構成要素 説明
1. 状況説明 ターゲット顧客は誰か?顧客の世界の中でサービスやプロダクトの追い風になりそうなものは何か?
2. 問題の発生 顧客の問題や悩みは何か?
3. 解決策 プロダクト名は何か?プロダクトのジャンルは何か?
4. 危機 競合は何か?顧客に解決策の対応を躊躇わせる心理的なハードルは何か?
5. クライマックス 顧客の問題を解決し、危機的瞬間や抵抗を乗り越えさせるものは何か?プロダクトの一番の価値提案、差別化要因は何か?
6. 短期的結果 プロダクトを知った顧客にどんなことを思って欲しいか?
7. 長期的結果 目的を果たしたユーザーに何が起こるか?ビジネスの大きな目標やミッションは何か?
参考元:ドナ・リチョウ著「ストーリーマッピングをはじめよう」,ビー・エヌ・エヌ新社,2016年,P56

Slackの公式サイトには、「チームの生産性を最⁠大⁠化⁠す⁠るビ⁠ジ⁠ネ⁠スコ⁠ラ⁠ボ⁠レ⁠ー⁠シ⁠ョ⁠ンハ⁠ブ」 と書かれています。しかし、「チームの生産性を最大化する」という言葉だけではどのように最大化するのか、具体的にどんな体験なのかは解釈が分かれそうです。 では、ちょっと長いですがSlackのストーリーを読んでみてください。



ストーリーの構成要素 説明
1. 状況説明 ターゲットは忙しい社会人である。今日、職場でのコミュニケーションがかつてないほど簡単に、かつ頻繁に実現するようになっている。メール、Twitter、Facebook、SMS、インスタントメッセージ(IM)、ビデオチャット、メッセージ機能付きのオンラインのプロジェクト管理ソフトなど、人々が仕事でツールを活用するケースはどんどん増えている。チーム内で連絡を取り、連絡の取れる状態を保ち、コミュニケーションを取り、情報を共有し、コラボレーションする方法は今や無数にある。
2. 問題の発生 しかし、このコミュニケーションとコラボレーションが面倒である。かつてなく簡単に、やりやすくなっているとは言え、全てを追うことあるいは一元化することはやはり難しい。そのため、簡単に行くはずのことが簡単に行かず、時間とお金が無駄に費やされる。
3. 解決策 そこで、登場するのはオンラインコラボレーションツールのSlack。
4. 危機 オンラインコラボレーションツールなら他にもGmailやIMなどをはじめ数多くの類似サービスがある。何が違うのか?
5. クライマックス Slackの一番の価値は、コミュニケーションを一箇所に集約できるワンストップのソリューションであること。何より、PCからでもスマホからでもタブレットからでも、いつでもどこでもアクセスができる。
6. 短期的結果 Slackを導入したチームに「もう二度とメールは使いたくない」と思ってもらえたらクールだ。
7. 長期的結果 グループ内での人々のコミュニケーションとコラボレーションがいっそう促進されること。
参考元:ドナ・リチョウ著「ストーリーマッピングをはじめよう」,ビー・エヌ・エヌ新社,2016年,P57

Slackというサービスが誰のどんな問題を、どのように解決して、どんな結果をもたらすのかが理解しやすい形で表現されています。これを読んだ人は一定の共通認識を持てるのではないでしょうか?

ストーリーの書き方

ストーリーを構成する7つの要素を順に書いていきます。文章を書くだけなので、特別な準備は不要ですぐに始めることができます。

コンセプトの表現方法 3:ストーリーボード

3つ目は、「Heartline」というアプリの例にストーリーボードによるコンセプトの表現方法を紹介します(ストーリーボードとは、絵コンテのようにサービスの体験を描く手法です)。このアプリのコンセプトは 「自分を愛してくれている人との生命線 (A Lifeline to Your Loved Ones)」 です。より具体的には、「リストラされた社員が社会的な孤独と絶望に包まれる中、アプリを通して友人達から励ましの言葉やサポートを受け、精神的安心を取り戻す」というアプリです。なるほどと思いつつ、しっくり来ない人も多いのではないでしょうか?では、次のストーリーボードを見てみましょう。

参考元:Chelsea Hostetter,"Heartline: A Lifeline to Your Loved Ones (Storyboard)",SEPTEMBER 28, 2013,http://www.ac4d.com/2013/09/heartline-a-lifeline-to-your-loved-ones-storyboard/

精神的安心を取り戻すということがどんな気持ちなのか想像でき、どんな価値を提供しようとしているのかより理解できたのではないでしょうか?1枚2枚の画像を見るよりも、ストーリー形式なので更に伝わりやすくなっています。また、あえて英語のサービスを例に用いましたが、言葉が分からなくてもある程度伝わるのがビジュアル化する1つのメリットです。チームに外国人がいる場合や海外の企業と協業する場合、お互いの外国語スキルに頼らずコミュニケーションを取る方法としても有効です。

ストーリーボードの簡易的な作り方

例に挙げたようなストーリーボードを書くのはかなり労力が必要ですが、最初はラフな手書きでシンプルに4コマ程度で書くと良いと思います。もちろん、コマが足りなければ必要に応じて追加しましょう。

  1. 白紙に4つのコマを作る
  2. 最初のコマに問題を抱えているユーザーの様子を描く
  3. 最後のコマにその問題が解決された様子を描く
  4. 1コマ目から4コマ目の状態にするための解決方法を2,3コマ目に描く

コンセプトの表現方法 4:動画(参考)

最後に、MR(Mixed Reality)ヘッドセット会社のMagic Leapが制作したコンセプト動画を紹介します。動画は制作コストが高く、社内共有のためだけに作るのは勿体ないので「こんなやり方もある」という参考程度に見ていただければと思います。





引用元:Magic Leap. (2015, March 19). Magic Leap | Original Concept Video. Retrieved from https://www.youtube.com/embed/kPMHcanq0xM

動画になると非常に理解しやすいですね。Youtubeの動画説明欄には「Back in the day it was tough to explain to our friends what we were building. So we made this concept video with our partners at Weta Workshop to show what a mixed reality could be.(少し前まで、私達が何を作っているのかを友人に分かってもらうのは大変だった。だから、Mixed Realityで何ができるのかを示したコンセプトムービーを制作した)」とあります。世の中にとって新しいサービスを始める場合、ユーザーにその価値をイメージしてもらうためにビジュアルや動画で表現するのも1つの手段ということですね。

まとめ

コンセプトの表現を工夫するだけではコミュニケーションに関する全ての問題を解決できないかもしれませんが、同じ認識を持ちやすくなることによってコミュニケーションが取りやすくなるはずです。今回紹介した方法以外にも、共通認識が持てるならどんな表現方法でも良いと思います。比較的簡単に始められる方法を紹介してみましたので、実際にやってみては如何でしょうか?あなたがより良いサービスを生み出すために、この記事が少しでも貢献できれば嬉しいです。

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