ケーススタディ

インドのユニコーン企業から優れたUXのヒントを得る

成長著しいインドのユニコーン企業のサービスを実際に体験し、参考になるUXを紹介します。
avator-kameyama
Kota Kameyama
2019-1-25

「最近インドってどんな感じなんだろう?成長著しい国のサービスを体験すれば多くの刺激を受けられるに違いない」と思い立ち、先日インドに行ってきました。現地ではHCIカンファレンスのIndiaHCI 2018に参加したり、そこで知り合ったインド人UXデザイナーのスマホ画面を見せてもらって、入っているアプリを順番に体験してきました。フードデリバリーのZomato、タクシー配車アプリのOla、ファッションアプリのMyntra、ニュースアプリのCuriosity、宿・交通予約アプリのGoibobo、オンラインショッピングのFlipkart等々。

どのサービスもクオリティが高いのに驚きましたが、特にインドの代表的なユニコーンであるフードデリバリーサービス「Zomato」とタクシー配車サービス「Ola」の体験が優れていたので、本記事ではそのUXを紹介していきます。皆さんがプロダクトを設計する際の参考になれば幸いです。

1. Zomato - フードデリバリーサービス

Zomatoは、インドで大きな市場規模があるフードデリバリー業界においてSwiggyと人気を二分するサービスです。既に世界24ヶ国に事業を展開しています。

出典:Zomato 公式サイト

フードデリバリーということでZomatoは料理の宅配がメイン機能ですが、それ以外にも下記のように機能がたくさんあり、食に関するプラットフォームとなっています。

  • レストランの検索
  • レストランの予約
  • 料理の宅配
  • テイクアウトの予約
  • 個人の料理写真アルバム
  • 街中の人気レストラン紹介ムービーの配信
  • and more...

実際のUIはこんな感じです。要素や色などの情報量が多めです。エンプティステートに可愛らしいイラストがあり、遊び心に溢れています。

では、実際にZomatoでテイクアウトの予約を利用してみて良かった体験を紹介していきます。

良い体験1 : 情報量が多くても迷わず使える

上記はテイクアウトの予約の流れです。初めこそUI上の要素の多さに混乱しましたが、すぐに慣れることができたので「レストランの選択 → 料理をカートに登録 → 金額の確認 → 支払い方法の選択 → 注文」という一連のフローにおいてほとんど迷わずに操作することができました。情報量が多いのにも関わらず迷わない理由として、たとえば下記が挙げられると思います。

  • 色やフォントの大きさにメリハリが付いているので、どこを見るべきか理解しやすい
  • 各画面でレイアウトに一貫性が保たれているので、使い方や操作方法を学習しやすい
  • 一旦料理をカートに入れておけばどの画面からも1タップで注文フローに戻れるので、迷子にならない

情報量の多いプロダクトを作るときの参考になりそうです。

良い体験2 : ユーザー視点の言葉選び

上記の画面はテイクアウトの注文完了画面の一部を日本語訳したものです。オーダーの受け付けステータスの文章が丁寧で気が効いています。何故この言葉が優れていると感じたかと言うと、インドの通信環境に対するユーザーの不安をうまく払拭するように書かれている からです。

というのも、実はインドは通信インフラがまだまだ整っていない国です(インドは世界88ヶ国を対象にした通信速度のテストで最下位)。私は旅行者用SIMを使っていましたが、LINEの送信に失敗したり、ブラウザすら開けないことがよくありました。そのため、Zomatoのオンラインでの注文に関しても「注文処理はちゃんと完了するのだろうか?」と不安に感じていたのですが、上記の文言を見て「Zomatoは注文が届くようにしっかりやってくれている」という安心感を感じることができました。個人的にインドでの通信トラブルにはうんざりしていたので、この文言にはちょっと感動しました。ちなみに、2、3分経つと下記の画面に切り替わります。

誠実で紳士的な人格がアプリにあるようにも感じられます。文章の書き方一つでユーザーに与える印象が大きく変わるので、ユーザーが利用しているときの気持ちを考えて言葉を選ぶことが大事ですね。

良い体験3 : また使いたくなるゲーミフィケーション

Zomatoにはポイントとレベルというシステムがあります。

  • ポイント:お店のレビューを書いたり、料理の写真をアルバムにアップすることで溜まる
  • レベル:ポイントが一定以上になるとレベルアップする。全13レベル。高レベルになると、評価の高い人気レストランから割引券や招待券が届いたり、書いたレビューがガイドブックに掲載されるなどの特典あり。

Zomatoにはエンゲージメントの高いユーザーが多いと言われていますが、その一因はポイントとレベルというインセンティブにあると言われています。実際、次のような好循環が生み出され、一度Zomatoを使ったユーザーは継続利用する可能性が高いようです。

  1. 写真とレビューがユーザーから寄せられる
  2. お店に対する評価の信頼性が高まる
  3. 利用ユーザーが増える
  4. 更に多くの写真とレビューが寄せられる
  5. 更に評価の信頼性が高まる
  6. 更に利用ユーザーが増える、かつ定着する
  7. (以降繰り返し)

私も実際に写真を上げてみましたが、簡単なアクションでポイントが溜まるという手軽さ小さい達成感の得やすさ が良いと感じました。こんな簡単なことで人気レストランの招待券が貰えるなら、とりあえず使ってみようという気にもなります。よく写真を撮る人であれば、通常の写真管理アプリではなく、きっとZomatoに上げたくなると思います。単に使ってもらうだけじゃなく、「楽しく」使ってもらえる仕組みになっているのが凄いです。

Zomatoのまとめ

Zomatoは多機能なので一見複雑ですが、大きなストレスはなく快適に使えたのが印象的です。レストラン検索や注文以外にも、レストランの紹介ムービーやテーマ特集も、お店を探しているうちに延々と見てしまいそうなほどクオリティが高いです。機能の複雑さはユーザーを混乱させる可能性もありますが、Zomatoの場合は逆に「食事に関しては何でもあるし、困ったらとりあえず開けば何か見つかりそう。だから、次も使ってみよう」という期待感に繋がっていました。

しかし、アプリの体験が良かった一方で、店舗との連携に難がありました。実際私がお店にテイクアウトの料理を受け取りに行くと、お店側が注文を把握していなかったり、オンライン決済したのに再度支払いを要求されたりといったトラブルが起きました。結果的にオンライン決済の確認が取れたので2重で支払う事態は免れましたが、今後この辺りが改善されると嬉しいなと思いました。

2. Ola - インド版Uber

出典:Ola Cabs 公式サイト

Ola Cabsは2010年に始まったインドのタクシー配車サービスです。通常の配車に加え、レンタカーや法人向け出張プランなど様々なサービスを展開しています。

UberやJapanTaxiを使ったことがある方はイメージしやすいかと思いますが、行き先の指定、車の位置確認、待ち時間の表示、オンライン決済、評価などができ、とても手軽に配車できます。実際のUIはこんな感じです。

良く見ると、広告やがん治療への寄付などへ導線があったり、スタンプを押したようなイラストがあるなど、日本では見慣れない特徴も見受けられますね。

では、実際にOlaを利用してみて良かった体験を紹介します。

良い体験1 : 「Ola Play」で音楽やテレビを楽しめる

出典:Ola Cabs 公式サイト

車の種類によっては、「Ola Play」という車内エンターテイメントを利用できます。Ola Playでは音楽、ラジオ、テレビ番組、映画などを後部座席に付いたHDディスプレイで視聴できる他、無料Wi-Fiも利用可能です。日本とは異なり、タクシーの平均利用時間が45分〜55分と長いので、乗車中の快適さが求められたのだと考えられます(参考記事)。



出典:Ola Cabs 公式サイト


使い方はシンプルで、乗車すると「Hi, Kota(私の名前)!Ola Playにようこそ。楽しんでね!」とOla Playに話しかけられるので、目の前の端末で好きな音楽やテレビ番組を選んで再生するだけです。私はインドの「Best Hit 50」というプレイリストをよく流していました。

実際に利用して良かった点は次の2つ。

1つ目は、選曲の面倒さを無くす自動再生機能です。これは、乗車後にしばらく音楽を再生しないでいると自動で選曲と再生がされる機能です。「何の曲にするか考えたり、選ぶ時間を無駄にしたくない」というユーザーのフィードバックが元になっているそうです。私も何度もOla Playを使ううちに「どの曲にしよう。なんか選ぶのだんだん面倒になってきたな...」と感じていたのですが、「うーん」と悩み始めた絶妙なタイミングで曲が始まるのでちょっとした感動を覚えました。

2つ目は、視聴履歴に基づく選曲 です。これは、個人アカウントに蓄積されたOla Playの視聴履歴データを活用して、自動再生時にオススメの曲を選んでくれる機能です。この機能が無ければ、限られたプレイリストを毎回同じ曲順で聞くことになっていましたが、乗る度に新しい曲を提示してくれるので飽きません。いつの間にか、乗車したら何もせずに自動再生を待つようになっていました。

また、今回は利用していませんが、スマホと連携すればスマホでもOla Playを操作できるようです。インドの道は凹凸が多く、後部座席のディスプレイがかなり揺れるので操作しにくいなと感じていましたが、スマホなら幾分解消されそうです。また、乗車中に電話がかかってくると自動で音楽のボリュームを下げる仕様になっているようで、こういった細かな気遣いも素晴らしいと思います。

良い体験2 : 治安の悪さへの対処

治安の悪い国ならではのUI要素として緊急ボタン(画面の右上の赤いボタン)が印象的でした。インドではタクシー乗車中の誘拐といった犯罪が比較的多い国です。このボタンは乗車中にいつでも押せる、かつ目立つ位置に配置されており(Uberよりも目立つ位置です)、更に初回利用時のガイドでもハイライトすることで、必ずユーザーがその存在を認識できるようになっていました。公式サイトでも「安全なドライブ」を売りとして打ち出しています。

Olaのまとめ

全体として使い勝手は良く、アプリ上の体験で困ることは特にありませんでした。ただ、困ったことを1つ挙げるとすれば、インドの交通事情による配車の遅延 です。主にバンガロール(インドのシリコンバレーと呼ばれています)で利用しましたが、交通量があまりに多すぎて、曲がりたい場所で曲がれないなどの事態が発生し、待ち時間が増えることがよくありました(あと5分で来るはずが20分に増えるなど)。遅延があまりに酷い場合は一旦こちらでキャンセルし、再度手配を試みることになりますが、これがとても億劫でした。

あまりに捕まらない場合は、Uberでもタクシーを探すことになります。現地の人もOlaとUberを半々くらいで使い分けているとのことでした。

普段日本では感じませんが、物理的なインフラ面が整備されていないと体験にも大きな影響を及ぼすことを改めて実感しました。当然ではありますが、オフラインとオンラインが関わるサービスの場合はアプリ内の体験だけでなく、オフラインの体験も重要ですね。

総括

インドのサービスを紹介してきましたが、如何でしたでしょうか? 私がインドのサービスを体験したり、現地のUXデザイナーと話す中で個人的に感じたことを総合すると下記のようにまとめられます。

  • インターネットに接続されたあらゆる国で高品質のサービス、UI、UXが生まれていても全く不思議ではない(国の発展状況とオンラインサービスのクオリティは関係がない)

インドはインフラを見るとまだ発展途上という感じでしたが、オンラインサービスのUIやUXは優れるものが多いです。おそらく、インドは英語が公用語なので、海外(たとえばアメリカなど)の最新情報を不自由なくインプットでき、結果としてアウトプットの品質が高くなっているのだと思います。UXはアメリカが進んでいると言われていますが、その他の国からもどんどん良いサービスが生まれていることを肌で実感しました。私自身もこれからより良いサービスを生み出せるように、広い視野を持ち続けたいと思います。

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